2024年12月に読んだ小説
読み終えたのが溜まってきているのだが、とりあえず4冊で区切る。『八咫烏』シリーズがメインだ。
【烏は主を選ばない】
漫画感想文でも「やられた!」と書いたが、さらにその後の結末で「またしてもやってくれたな」と。『単』では、序中盤信じて疑わなかった「主人公あせびの君」が終盤でひっくり返される事態に悶絶した。『主』も、雪哉と若宮が良好な主従関係を結んでいく物語……と思って読んでいたら最後の最後にひっくり返しやがった。なんだよこの作家! 読者裏切りすぎだろ!
話としては大半が漫画感想文で書いてしまっているので、最後の最後の部分のみ。長束が雪哉を「北家当主の孫」と表現する。読み込みが甘くてどちらの意味で取ればいいのか分からなかった。1巻で雪哉の義母である梓は北家当主と親し気に言葉を交わしていた。私はそこを読んで、梓は北家当主の娘だと思ってたのだが……それが正しかった場合、長束は雪哉のことを梓の実子と誤解しているという話になる。正解はそうじゃなくて梓は一応北家とは無縁ではないものの血の繋がりがあったわけではないようで、雪哉を生んだ後に亡くなった女性が北家当主の娘だった。雪哉は自分の出自に複雑な思いを抱いており、北家の人間と扱われることを嫌っていた。従って長束の発言は爆弾もので、ここに来て宗家の人間と埋めがたい溝が発生してしまう。まあ正直なところ、雪哉の言動はちょっと子どもっぽいかなあと思うが、実際まだ思春期に相当する年齢だし、そこんところ周囲は大人なんだからもう少し上手いことケアしてあげても良かったんじゃないかなとも思う。にしても「垂氷の雪哉です」という自己紹介で悟り、黙っていた若宮は鋭いというか。流石「真の金烏」だなあ。
どちらかというと漫画の方の感想になってしまうのだが、漫画版4巻の後半がオリジナルエピソードとは恐れ入った。これで普通に終わってたら手放しで絶賛できたのに。原作のラストを知ってから漫画版4巻巻末の原作者とコミカライズ担当の対談を読むと、「一番の理解者」云々について穿った見方をしてしまう。この一連の作品、上げてから落とすのが主眼で、その「上げる」部分を丁寧に描写することで「落とし」の威力を上げるってことか?と。原作をさらに読み進めるとそうでもないような気もするのだが……果たしてお二人の意図や如何に。
【黄金の烏】
「黄金」で「きん」と読むらしい。『主』読み終える前に先行して買っていたのだが、手元になかったら『主』でシリーズ読むのを中断していたかもしれない?
『黄金』では突如別の生物「猿」が出現し、これまでと違ってホラー要素が強くなる。さらには「人骨」まで出て来てなんやかんやするので、話は八咫烏の一族のみならず我々人類の危機にまで及ぶのかと身構えてしまう。そもそも八咫烏の住まう山内とは別に外の世界がある、というのをここまであまり考えていなかった。そういえば奈月彦の「外遊」先とはどこだったのだろう? 我々人間の世界へ来ていたのだろうか? 最後に若宮が雪哉に見せた辺境での光景は、人間界のものなのか?
ネットで時折話題になる「(漫画やゲームなどで)敵として出てきたときは強かった人物が、味方になると途端に弱体化するのはなぜ?」がまさか本作でも味わえるとは。『主』では最も手強い相手と思われた長束の存在が、完全な味方と判明した『黄金』ではいやに軽く感じてしまう。路近にしたり顔されてキレるところも小者感満載。お願いもうちょっとどっしり構えてお兄様!
【空棺の烏】
雪哉、勁草院へ入る。あれだけ嫌がってた『主』はもしかして伏線だったのか。
ここまでさんざんだまくらかされていたので、読み始めてすぐ「犯人は茂丸! まだ何も起きてないけど茂丸が真犯人!」と決め付けた。でも完全にそういう話じゃなかった(笑) またしても「やれれたー」である。
新しく登場した人物とのやり取りの中で、「宮烏」――いわゆる貴族と「山烏」――いわゆる平民の身分差がクローズアップされる。勁草院では身分に関係なく実力主義とされるが、路近の弟公近は身分を振りかざす鼻つまみ者となっていたり。とまあ、ここまでの『八咫烏』は中央政権の話が中心だったが、『空棺』では雪哉と年齢の近い友人たち、そして先生とやりあったりする学園ものとなる。考えてみれば意欲的なシリーズだ。ここまでの4冊、同じ筆者による同じ世界観を持つ同一シリーズなのに、それぞれで読み味が全く異なるのだから。
『黄金』でも「金烏」の秘密が一つ明らかにされたが、『空棺』ではもっと根幹に関わる事実が判明する。金烏は歴代の金烏の記憶を受け継ぐ。初代金烏の生まれ変わり、といった方が適切なのか。しかし若宮には、金烏であれば蘇るはずの記憶が蘇らない。即位直前になって白烏に指摘され、白紙撤回となり苦悩する若宮。原因は、禁門の向こうから帰って来なかった先代金烏にあるのでは、と推測される(これがタイトルの『空棺』となる)。そも禁門とは何なのか。禁門の向こうには何があるのか。シリーズ4冊目にして謎は深まるばかり。
相変わらずどこか頼りない長束。あの頃の輝いてた長束様を返して!
路近にドヤされる公近がちょっとだけ可哀そう。確かにイキがっていたけど、路近にけしかけられた面もあるので……まあその前から宮烏だと思ってふんぞり返っていたのかな。
―――――
『八咫烏』シリーズの続きの前に、ちょっと一服。
【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? エイプリルフールまとめ】
侃侃諤諤初!となる同人誌だ(*1)。但し! 『魔奴愛』原作者による、曰く「非公式」の同人誌だ。作者がPixivFanboxで公開していた「エイプリルフール」シリーズに新たな書き下ろしを加えたまとめ本。表紙や挿絵などはコミカライズの板垣ハコ氏、双葉もも氏が担当している。「どこが『非公式』なの?」と言いたくなるが、HJ文庫から出版されている本編とは無関係、ということで「非公式」なのだろう。
エイプリルフールということで夢オチ満載の、普段に輪をかけて脱力感満載のほのぼのコメディーになっている。私の一押しは、髪にお花咲かせてるアスモデウス。おめめに「☆」が浮かんでるのも可愛い。
*1 なお前回、「漫画は『陸蒸気はじめました 増補版』で同人誌デビュー済である」みたいに書いたが、『増補版』も「その後発表した同人誌の内容を付け加えた」だけで、書籍としては一般流通の漫画だった。
―――――
読んだ順はこの通りなのだが、その後さらに『八咫烏』シリーズを読み進めている。5冊目の『玉依姫』、そして第一部完結となる『弥栄の烏』まで読了した。私としてはかなりのハイペースで、小説をここまでガンガン読み進めるのは『Re:ゼロ』の第三章の頃以来だろうか? すぐに続きが読めるよう、文庫版が出た巻は全て買ってある。それらを読み終えた後に文庫化されていない『望月の烏』に突入するかどうかは現状不明。本屋のお姉さん曰く「先が気になって文庫が待てず、『望月』は大きいほうを買ってしまった」らしいので、私もきっと同じ道を辿る運命にある、かもしれない。
さて、『Re:ゼロ』の「Ex」6巻が発売され、予定では明日『魔奴愛』19巻が控えている。理想としては読み終えた2冊にこの2冊を加えて次回の漫画感想文にしたいところだが、多分途中で『八咫烏』シリーズの続き(外伝)を読み始めて、順番とか感想文はぐちゃぐちゃになると予想される。ちなみに、年始には久しぶり……というか、読み始めてからは初めてとなる『イケナイ教』の新刊も控えている。2025年も初っ端は飛ばして行くことになりそうだ。
(2024.12.26)
|