仕掛品の話(雑談)
模型の話をしていると時々出てくるのが、仕掛品の話。キットや完成品改造など、作り始めたはいいけど何らかの事情でストップしてしまい、完成していない状態の物を指す。止まる要因はケースバイケースそして人それぞれ。途中で飽きた、大変すぎて気力が持たない、完成品が出てしまった、パーツが足りないことに気付いた、失敗した……等々。そして人によっては仕掛品ばかり量産してしまい、なかなか完成させられないという話も。
「そこへ行くと橘さんはすごいですよねえ、手を付けたが最後、必ず完成させてる」
というお褒めの言葉を頂いたりすることもあるのだが、事実とは違う部分もあるので「いえいえそんなことないですよ」と答えるのだが、どうにも謙遜としか受け止めてもらえない。確かにここ最近、特に「鉄道模型制作報告」を始めてからは100%完成させているのだが、過去を紐解けば結構完成していないものがある。今日はそんな話。
1.高校時代編
記憶にある中で最古の仕掛け品は、GMキット改造の113系800番台。例のリストにも載ってるやつです。途中で止まってしまった要因は複合的なもので、高校生だったので本業の勉強の合間を縫ってというのが大変だったのと、資料が足りなくて分からない部分があったのと、最後に当時の技術レベルでは壁になる部分があった。
クモハ381に挑戦したこともある。もちろんトミックス製品の切り継ぎだ。多分切り継ぎ自体はまあまあうまく行ったのだが、前面貫通扉をどうしよう?といったあたりでストップしてしまい、そのままお蔵入り。今ではカトーから完成品が出ているので、再開の可能性はゼロだ。これが上手く作れていたらクロ(しなの用のサロ改造車)も作ってたんだけど。
2.大学時代編
50系5000番台――海峡を作ろうとしたことがある。改造パーツセット、みたいなのが小さなメーカーから発売されたので、いっちょ挑戦してみようかと。確か12系だったかの窓ガラスパーツが付属していて、それを削って1枚固定窓としてはめ込む指示があった。どうして12系の窓ガラス? 多分元の50系の窓ガラスは2段窓の段差が表現されているため、削って1枚窓にするのは困難を極める。12系の窓は段が表現されてないのを逆手にとって、サッシ表現を削ってコンパウンドで磨いて1枚窓にしてしまおうというアイディア――そんな風に記憶している。中止の理由はもちろん、その窓ガラス削るのが大変だったから。ボディは確か塗装直前まで加工が済んでいたはず。こちらも今では完成品が出ている。
103系JR西日本更新車。私の一番好きな鉄道車両は103系なのだが、その更新車を作ろうとした。各社の製品の窓埋めは大変なので、ケント紙を買って来て図面を引いてカットして……ペーパー加工で作ろうとしたのだ。ところがやっぱり大変で、多分窓抜きぐらいまでは進めたような記憶があるんだけど、気力が持たずに撤退。当時はまさかキット及び完成品が出るとは全然思わなかったなあ。
大学の頃か高校生だったかは覚えていないのだが、旧型国電を作ろうとしたこともある。今のような変に拘ったものではなく、素組だった……にも拘わらず、箱にするだけして塗装が面倒でそのままになってしまった。それが40系だったか42系だったかも覚えていないぐらい昔の話(平妻型だったので51系じゃないと思う)。
3.その後編
ボナファイデプロダクトの105系(和歌山線)は塗装段階まで進んだのだが、1色目を塗った直後に手すりパーツの脱落を発見し、そこで気力が萎えてしまった。今であれば付け直して続行するところだが、当時はまだ経験値が足りないというか、失敗に対して打たれ弱かった。これまた完成品が出ている(マイクロエース及び鉄道コレクション)ので、もう手を付けることはないだろう。
過去幾度となくGMキットの京阪小型車を作っている。実は過去作品では致命的な勘違いをしていて、そこを修正した決定版を作りたいと考えているのだが……そうやって作り始めた“最新作”は中断したままになっている。鉄コレ動力を組み込もうとして、幅が足りないので側板を削り込んだのだが……手間が掛かりすぎてそこで中断。そう、今では鉄コレで出ていて、それ用の動力を使えば側板削らなくていいんです。もちろん鉄コレで出てしまった形式もあるんだけど、出てない形式もあるので計画としてはまだ残っている。長期計画表にも載ってます。
最初期の鉄コレ12m級車と15m級車を加工してフリーランスを作る計画がある。こちらも計画表に出ているのだが、鉄コレが出た当時に作ろうとして例の液体にドボンして塗装を剥離したものが何両かある。その時点ではアイディアが固まっておらず、いい案が出るまで置いておこう……となって果たして今年で何年目か。いや、一応いい案出てきたのでいつでも着手しようと思えばできるのだが、順番がなかなか回ってこない。
以下は、今日発掘していたら出てきたので写真付き。なお順不同である(そもそも順番を覚えていない)。
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・林檎製作所 大阪市交50系
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入手経緯についてはあまり詳しく覚えていないのだが、手に入れにくくて1セットは自分で買って、もう1セットは人にもらった記憶がある。人からもらったといこともあり、しっかり完成させようと思った……その割には何故か無謀にもライト点灯化に挑戦し、集電機構がどうにも上手く行かなかったためにそのままお蔵入りした。集電機構は今なら何とかならないこともないし、何ならライト点灯させなくてもいいので、今後気が向いたら続きを作る可能性はゼロではない。
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・にどる屋本舗 旧型客車
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多分知ってる人はほとんどいないと思う。にどる屋本舗というところが作っていた旧型客車のペーパーキット。この時点では多分先のペーパー製103系も諦めていなくて、これを完成させたらその経験がフィードバックできる……と考えていた部分もある。一応1両箱になり、2両目に突入したところで気力の限界が来た。
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・70系300番台
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GMの70系キットのシル・ヘッダーを削って300番台に改造しようとしたもの。「あれ?」と思われた方は正解。その後全く別の形で完成している。この時はモハを2両加工したあと、続くクハの1両目が終わったところで疲れ果てて断念。その後クハは新潟車に転生している。
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・セキ8000
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モデルアイコンのセキ8000。組み立て自体は簡単で何も障害となるものはないはずだったのだが……ナンバーのデカールを貼る段階で、ナンバーが4種類ぐらい?しか付いていないので自作しようとした。うちにはMDプリンターがあるので白色デカールの製造が可能だったのだ。ここで何故か手が止まり、再開のきっかけを掴めないまま現在に至る。いろいろと勿体ないのでいつかはと思っているが、そんな日は来るのだろうか(今だとインレタも発売されたんだっけ?)。
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・475系
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トミックスのHG475系(国鉄色)を塗り替えて九州色にしようとした。厳密には作り始めたわけではなく、とりあえず塗装の剥離テストをしてみようとクハだけ例の液体に漬けただけなのだが。それでも存在を忘れていて、今回いろいろ発掘していて「そういやあったな」と思い出したぐらい覚えていなかった。長期計画表にも記載がない。勿体ないのでいつかきちんと塗り直したい。完成品が出ている? いいんだよ自分で塗るのが楽しいんだよ。
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・阪急2800系3扉車
コメント
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どこかのメーカーの金属キットで、橘雪翼史上最も完成に近付いた仕掛品。現在は完成品が出ている……と言いたいところだが、キット購入時点で完成品が出たか出ることが決まっていた。完成品があるせいでこのキットが大安売りになり、“はんだ付けを楽しむため”に購入したのだ。はんだ付けは楽しんだし塗装も楽しかったので、完成しなくても元は取れている。なお完成しなかった理由は、動力ユニットに鉄コレ用を入れようとしていたくせに床下機器の対応加工を忘れたのと、その床下機器のパーツに封入ミスがあったこと。
完成未完成とは関係がないが、1両目の裾にちらっと見えるボディ内部が塗装されていない。今では金属キットを組むとき室内側も塗装しているが、それはこの2800系のキットがきっかけだ。ここまで組んで、「金属キットは内側も塗っておかないと金属光沢が悪目立ちする」ということを学んだのだ。
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・クモハ41 クハ55
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リトルジャパンのキット。同社から出ていたクモハ40やクモハ42のキットは素晴らしかったが、こちらは屋根の合いが悪く、ボディ一体型でドアの選択もできず……と言ったあたりがイマイチなキットだった。後輩に譲ったため現存せず(写真は過去のものを再掲)。
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以上、ざっと思い出しただけでもこれだけある。多分本格的に家探ししたら記憶にないものがもっと出てくるはず。ちなみにだが、完成させる意図を完全に放棄したものが多く、それを「仕掛品」と呼んでいいのかどうかは分からない。
では、一旦「仕掛品」となって放置された後に、作業を再開して完成した例はあるか? 数は少ないが「ある」。
・ワールド工芸 ユ101澪つくし号
デカールの貼り付けでミスってお蔵入り。そのまま忘れ去られる予定だったのだが、メーカーが再生産したのでデカールの取り寄せをし、無事完成に持ち込んだ。
・旧型国電 42系 第一期
当時はこういう表現をしていなかったが、「現行レベル」なので後付けでこういうタイトルにしておく。クロハ59の窓配置加工に疲れてストップしていたのだが、ある日やる気が謎の復活を果たし完成へと持ち込んだ。
・先述の70系300番台のクハも、「仕掛品のち完成」かも……。
・Maxモデル 島原鉄道キハ2500
塗装中にホルダーからボディを落としてしまい、傷が入って中断していた。ここから始まる3項目は、多分大きい模型だから未完成のままでは勿体ないと感じたのが“復活”の理由なんだろうなあ。いや、Nでもいいお値段したから作らないと勿体ないキット積んでるけどね。
・錦川鉄道NT3000形「こもれび号」
「これ」を「今回」のカテゴリに入れるかどうかは議論の余地が残るが、こちらも同じく制作中にミスをしてお蔵入りしたものを、形は変わっても完成させたので載せておく(リンク先に書いてあるが、元々「ひだまり号」として作っていた)。
・のぞみ工房 クモハ12 可部線仕様
配管で迷ったのと、「普段は塗装前に洗浄してるけどペーパーキットではできない、さてどうしよう」――この2点が理由で長年ストップしていた。配管はその後Nで何両も経験したので、洗浄に関してはともかく一度塗ってみよう、そんな感じで完成した。多分車両をペーパーで完成させるのはこれが最初で最後になると思う。
今、何かを作り始めたら一極集中で完成させてしまうのは、仕掛品にしてしまわないための工夫と言えばそうなる。2作品並行すると部品混じっちゃって訳分かんなくなることも多いしね。あと完成までのサイクルが伸びてモチベーションが保てないとか、いろいろ理由はある。ただ、どうしても何らかのきっかけでストップしてしまうことはあり得る。そうなったらどうしようか。「制作報告」とか「長期計画表」を作った理由は、老眼になって細かい作業に苦しむようになる前に作りたい車両を完成させておきたいから。現在自分にその兆候はないが、次姉が老眼入ってるらしく、私も油断ができない。つまり時間との戦いなので、仮に仕掛品が出来てしまったときの正しい対処は「くよくよ悩まず切り替えて次に着手する」だ。もしその理由が老眼だったら次も危ういが、それはただの時間切れなのでしょうがない。
というそんなわけで、今はとにかく一作ずつ確実に完成させていきたい。
(2024.11.17)
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