関西急電第二次代用編成完成

時間がかかったけど、関西急電第二次代用編成の完成だ

  手元の資料によると、この姿で走行したのは1953年の夏から翌年の12月まで。前年の茶色一色の代用編成の不評から80系と同じ色に塗られることになったらしい。僅か1年半ほどの活躍だが、たった1年半ほどしか走ったことがないからこそ模型で再現してみたい。この編成の存在を知った時からそう思い続け、ようやくこの度形にすることが出来た。
  編成は神戸方からクハ68078、モハ70116、クハ68060、モハ70115、クハ68099の5両編成。この画像では反対側の京都方を先頭にしている。いつもの通り?グリーンマックス製品をベースに、各社のパーツや動力、そして自作部品等も交えて仕上げた。

神戸方を頭にするとこんな感じ

  3両のクハ68はいずれもクハ55形から改造されたもので、両端は半流形、中間に位置するのが切妻形となる。以前作ったことのあるクハ55やクモハ60などとは異なり、原型にかなり近い姿となる。中間のモハ70は最初期グループ。こちらも原型に近い姿……と思われるのだが、特にパンタグラフ周りのはっきりした資料があまり多くなく、一部推測を交えて作成した。

同じ半流クハ55でも細部の相違点は多い

  両端の半流クハ68はそれぞれ昭和11年、昭和15年に製造されたクハ55。たった4年の違いだが、この頃の旧国は毎年仕様がコロコロ変わっており細かいところを見れば決して同じではない。ヘッドライト、ドア、屋根上のランボードなどなど。また、クハ68099はこの年のクハ55の一部だけに見られた特徴で、乗務員扉上にもヘッダーがあったらしい。そのため、クリームとぶどう色の塗り分けラインがヘッダーの分だけ前にずれていたりする。また、製造時期の違いによるものかは分からないが、運行番号表示も色が異なっていたので再現してみた。前回の「画像で侃侃諤諤」でお見せしたクハ68の運行番号窓の部分、塗り分けがややいい加減だったが(かなり良く見ないと見えないが)、上から部品をはめ込めば見えなくなると計算した上での手抜きである(笑)

中間クハ

  中間に入るクハ68は昭和7年製のクハ55が元車(**)。この車両の先頭部の塗り分けはかなり悩まされた。実車の経緯を考えるとサハ代用であり、塗り分けも中間車仕様になっていたのではないか。両端に半流、中間に切妻のクハを持ってきているあたり、当時の大阪鉄道局の方たちが編成美を考えたと思われる。ならば中間のクハは中間車としての装いで走らせていたと考えるのがしっくりくる。のだが、私は敢えてクハとして塗る計画も立てていた。クリーム3号を窓周りに残した塗り分けだ。その考えを一撃の元に打ち砕いたのは……実車写真である。たった1年半しか走らなかった代用編成の、中間車の写真なんかが出てくるはずもない。そう思っていたのに、世の中広いというか何というか、その中間クハの写真を撮っていた方がいらっしゃったのだ。しかもその画像はインターネットにアップロードされていて……白黒で、連結面が少し翳っていて判別し辛かったのだが、やはり考察通りクハ68060は中間車として塗られていたようだ。写真を残していてくれた方には大変感謝している。
  なお、中間に入るので前面部の手抜きはいろいろ考えられたのだが……結局窓ガラス以外は普段通りに制作した(普段は前面のみ窓ガラスのはめ込み化をしているが、この車両ではそれを行っていない。あと、幌枠が普段の切妻クハとは異なっているが、これは手抜きではなくて中間車仕様としてわざとこうしている)。

** 当初、「昭和8年製」としておりましたが、正しくは「昭和7年製」でした。訂正の上お詫び申し上げます。(2015.03.16.)

モハ70

  電動車として入っていたのは最初期グループのモハ70。モハ70のうち最初期のものだけは、妻面と側面の接合部を丸める加工が行われている。一方で、グリーンマックスのモハ70はそれより後のものをプロトタイプとしているので、そこが一番重要な加工点となる。妻面のディティールをほぼ全て削り落とした上で角の部分を丸く削り、ウィンドシル、ヘッダーや雨樋、キャンバス押さえなどの再設置。妻面窓はパンタ側には新設、非パンタ側の窓に関しても金型がズレているのか高さが微妙に合わなかったので作り直している。タヴァサホビーハウスのコンバージョンキットから作った方が楽だったとは思うのだが、コスト面と入手しやすさを考えて「GMキットからどれだけ作れるか挑戦してみよう」という自己満足の闘志を燃やしてみた。
  当初、屋根上配管はタヴァサキットの説明書通りに作る予定だった(以前、新潟色を作った時の説明書を保管してある)。しかし、資料写真を見ているとタヴァサの説明書とは様子が異なっており、どうやらここも後年になって手が加わっているようである。そんなわけで、長いランボード、配管覆いを自作しての自称原型仕様として制作した。予想外という意味でも今回一番悩まされたポイントかもしれない。

中間扉は締め切り

  本来の関西急電は80系を使って運行されており、80系が2扉車であるのに対してクハ68もモハ70も3扉。そんなわけで代用として走っている間は中間の扉は締め切られ、扉の窓にはその旨が表記されていた。ここも是非再現したいポイント……ということでMDプリンターを使って「締切」表示のデカールを作って貼ってみた。デカールのせいなのか保護に塗ったクリアーのせいなのか、透明度がやや悪くなってしまったのが残念なポイント。直接透明素材にプリントしてみることも考えたのだが、プリンターが壊れると取り返しが付かないのでとりあえずこれで我慢しておく。「締切」の文字間が開きすぎたのは反省点。狭いよりはマシと思ったのだが、2〜3パターン作っておいていいものを選ぶべきだった。

両端クハ68の別カット

  実はクハ68078で一ヶ所やらかしている。実車のドアはおそらく全て半鋼製になっていたのだが、乗務員扉に木製っぽく見せる加工を加えてしまった(キットのそのままで問題なかったのに)。あと、見えなくなってしまうのでほぼ問題ないのだが、前面貫通扉についても同様。該当する部品のストックもなかったのだが……。あと、屋根が鋼板ということは……妻面のキャンバス押さえも削っておくのが正解だったのかな? この辺りよく分からないので、また今度詳しい人に訊いておこう。
  そのクハ68078のヘッドライトは砲弾型で、タヴァサのパーツを使用。やや大きいような気もしたのだが、こうして完成させてみるとちょうどいいバランス? この部品、ヘッドライト部をステーで支える構造だが、どう考えても接着面積が稼げないのではんだ付けで固定した。将来ライトを点灯化させたいな、と思っているがここだけはこのままでは光らせられない。ライト点灯化加工に目処が付いたら、ステーの部分を真鍮パイプで置き換える加工を検討しようと思っている。資料を良く読み込んでいなかった段階では、クハは3両ともこの砲弾型だと思って部品を買い揃えた(実際は078のみ)。よって2つ余らせてしまったのだが、またそのうち原型仕様ぶどう色のモハ41、クハ55のバリエーションでも作ってみようと思う。
  テールライトは通称ガイコツ形と呼ばれるもので、多分どこかのメーカーから部品が発売されているとは思う。が、私は入手のしやすさとか将来の点灯化に備えて、いつも使っている銀河モデルの半流旧国用のテールライトを小加工してみた。プラの小片を接着して“ガイコツ”の“アゴ”の部分に見立て、その分突き出した状態で車体に接着(接着は塗装後)。本物とは取り付け方が全く異なってしまっているが、あんまり目立たない……と思う。流電でこれをやると取り付け部の違いが目立ちそうだが、半流ぐらいでは大丈夫。ということにしておく。
  ヘッドマークは、おそらく塗装済みキット関西急電80系用のシールを使用(「おそらく」なのはばら売りでシールだけ手に入れたから。買ってからもう何年も経っているが、ようやく使う日がやってきた)。旧国キットのセットに付属しているシールにも関西急電のヘッドマークが入っているが、印刷はこちらの方がくっきりしていると思う。
  今回は編成が固定されているので、連結器はいつものTNカプラーではなくてカトーカプラーを使った。飯田線用のものではなく、台車のカプラーポケットに取り付けるいっちゃん安いやつ。普段より気合入れて作ったのに、部分的に普段よりケチってローグレードなのはどうなんだろうねえ(笑) TNカプラーを使わないので動力もTM-17である必要がなく、TM-17換装で余ったTM-09を再利用している。ケチったわけではなくて資源の有効活用だよ?(笑) 両端クハの運転台側のみTNカプラーだが、これにしてもSPタイプではなく余っていた旧タイプを使っている。だって連結する予定がないからスプリング復帰式であるメリットがないもん(開き直り)。
  この時代の大阪鉄道局のPS13形パンタグラフは、大鉄局独特の補強が入っていたらしい。そのパーツを作っているのがKitcheN……なのだが、手に入らなかったので今回は見送っている(メーカーも在庫切らしているらしい。こんなニッチなパーツ、必要とする人少なすぎて再生産ないかもねえ……)。自作も考えたのだが、流石に面倒すぎて試作する前に諦めた。
  塗装は、モリタのクリーム3号とぶどう色3号を使用。屋根色は、クハ68078のみねずみ1号で、他車は以前から使っている調色ダークグレーである。

  日記(*1)によると去年の12月17日に着手したらしい。たった5両作るのにおおよそ3ヶ月もかかってしまった、ということである。予定では2月末頃に完成だったのだが……2週間ほど遅延。まあ、2週間程度だったら上出来かな(*2)。80系の関西急電も作りたいし(今度は登場時じゃなくて5両編成の各種バリエーションを)、42系の急電も作りたいし、時間はいくらあっても足りないねえ。

*1 かんかんがくがくけんけんごーごーのことではない
*2 最初期の計画では、12月中にモハ70の加工を終わらせ、1月中にクハ3両の加工を終わらせ、2月頭から色を塗って2月中旬に完成だったのだが。クハに思ったよりてこずったのと、モハ70の配管で悩んだのと、あと何だかんだで1月2月に用事してたのも響いた。要は計画の立て方が甘いのと、集中力が足りないのが遅れる原因だということ。

(2015.03.14)

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