地道な作業

トミックスとカトーのNゲージ165系

  ここでお見せしているのはNゲージの165系。左奥がトミックス製品、ハイグレードシリーズの165系、右手前がカトーの製品だ。共に同じ「クハ165」という形式の模型だが、両者にちょっとした印象の違いがある……と感じていただければ幸いである。注目していただきたいのは屋根。カトーは一色塗りであるが、トミックスのものは濃いグレーの上に明るめのグレーの部品が乗っている。そこの違いが焦点である。



上がトミックス、下がカトー

  屋根上に乗っている部品で主要なものは、クーラーとベンチレーターである。このうち注目して欲しいのがベンチレーター。上の画像で拡大して表示しているものがそれである。上のトミックス製品では、ベンチレーターが屋根とは別部品になっているが、カトー製品では屋根と一緒に一体部品として成型されている。なお、クーラーは両者共に別部品だ。さて、両者で表現の方針が違うベンチレーター、画像を見てもらえれば分かるとおり形が違う。トミックス製品では逆台形な形をしているのに、カトーは直方形に近いシルエットである。実車の屋根を見る機会は少ないものの、このタイプのベンチレーターは逆台形をしているはずである。よってトミックスの方が正しい形状である。何故カトーがこういう方式をとっているかというと、部品点数を減らすことでコストを下げようとしているからである。165系に限らず、多くの形式でこのようなことをしている。よりリアルな模型という意味ではトミックスに軍配が上がるが、コスト面、価格面で考えればカトーの考え方も決定的にダメなわけではない。
  が、やっぱりこの形状は気になる。のに加えて、上に書いた色の問題もある。実車の屋根は汚れがちで確認しにくいのだが、大抵のクルマの場合、屋根の地色とその上に乗っている機器類の色は違うらしい。というわけで模型でも別の色で塗るのが"それらしい"感じがして良いとされている。そんなわけで、トミックスのメリハリのある塗装表現に対し、一色塗りのカトー製品は見劣りしてしまう。クーラーは別部品なので、外して塗るのは簡単だ。しかしベンチレーターは……残念ながら外れないので、根性で塗るしかない。

   165系と同じく、今はもう存在しない国鉄型の急行用の153系という車両があった。165系の先輩にあたる。153系はカトーからは発売されているがトミックス製品はまだない。いずれ出るかもしれないし、一生でないかもしれないし、それはちょっと判断が付かない。ともかく、私はカトー製153系を持っている。153系にはちょっとした思い出がある。実車は見たことがないのだが、鉄道ファンという雑誌で東海道本線の往年の列車の特集があった。先ほどの165系や通勤型の113系、交直流の415系や475系他、フロント周りが共通という形式はたくさんある。その一番最初期にあたるのが153系だ(ひょっとしたら本当に最初かもしれない)。そしてその153系の初期型の車両はある特徴があった。その後に生まれる数々の形式と違って、運転台の位置が低くフロントガラスの占める面積が大きかったのだ。どっちかというと、ちょっとマヌケでかっこ悪いデザインかもしれない。後年、運転台の位置が高くなり、フロントガラスの天地方向のサイズが小さくなった車両の方が精悍なイメージがある。しかし私は、初めて見るちょっとカッコ悪い車両が一目で好きになった。「これ、模型で出ないかなあ」――と思ってた矢先に、カトーがそれを製品化発表したのだ。どうも私が模型を始めるかなり前に、後期型の高運転台バージョンは発売されていたようだが、そのときに低運転台バージョンを新しく加えて再発売されたのである。

こちらは153系の屋根。加工中ナリ。

  153系と165系は似た車両で、ひょっとしたら屋根の部品は共用かもしれない(し、違うかもしれない)。165系同様、ベンチレーターは屋根と一体成型されている。このカトー独自の伝統は、買った当時から気になっていた。カッコ悪い、と。程なくして、ベンチレーターを塗り分けよう、そう思ってチャレンジした。クーラーは取り外して、スプレーでより明るいグレーに(エアブラシを買うはるか以前の話だからね)。ベンチレーターは同じ色の塗料で筆塗りした。それが画像の左の屋根板である。車体から取り外し、さらにクーラー部品も取り外している(台座だけが残っている)。しかし今見れば、筆塗りの跡が汚いし、はみ出したりもしているし、何より一体成型のベンチレーターはカッコ悪い。というわけで以前から改良しようと思っていた。トミックスのベンチレーター部品は分売されているので、カトーの車両の屋根のベンチレーターを削り取り、トミックスの部品を取り付けてやればいい。そう思って数年……重い腰を上げてようやく作業開始。成型の都合上、ベンチレーターの裏側は凹んでいる。そのままベンチレーターを削ると穴が出来るので……埋めようと書いてあるのは多くの雑誌の加工記事。車輌によってはベンチレーターの配置にバリエーションがあり、バリエーションを作るときは"ない"場所のベンチレーターの穴を埋める必要がある。しかし、私の作業はあくまでも一体型のものを別パーツに置き換えるだけ。穴は開いているが、部品を取り付けたら隠れて見えなくなる。と割り切ってガンガン作業中。右の屋根板がそれで、豪快に穴が開いたままになっている。差し当たって12両分加工することにしたのだが……単調で面倒。言葉にすると「削り取る」の4文字で終了だが、一個一個丁寧に切除して跡をサンドペーパーでならしていく作業は非常に時間がかかる。本当にここまで手間を掛けるほどの見返りがあるのか?と自問自答しながらの作業。多分一心不乱に作業すれば今頃完成していてもおかしくないのだが、葛藤を抱えながらの作業はなかなか先に進まない。そんなわけで、あと数両分残っている。でも、週末ぐらいには……ベンチレーターが別パーツ化された153系12両編成がお見せできるかもしれない。

  ……のだが、話は終わらない。実は他にも、153系の新快速色というのを合計12両所有している。国鉄色12両を作業したのなら、"当然"新快速色もやるべきなのだが、果たしてそんな気力が残っているかどうか……。

(2009.06.23)

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