図解、邪魔駒とは

簡単な例

  上図、歩がいなければそこへ金を打てば詰む。ところが、歩がある故にそこには金が打てない。だから詰まない。これが"邪魔駒"というやつで、邪魔駒を消す手順をテーマにした詰め将棋がある、というのが昨日の侃侃諤諤本編のお話(一応念のため、この図は詰め将棋ではないので詰ます手順は存在しません)。その昔、豊臣秀吉は碁の対局において、自分の打ちたいところに相手の石があったら、その石の上から自分の石を打ったという(あれって豊臣秀吉だったよね?)。秀吉が将棋をやっててこんな局面に出会ったら、きっと自分の歩の上から金を打つに違いない。

で、先々週の懸賞問題

  左図が問題図(但し、勝手に持ち駒の飛車を当該箇所に打っている)。今打ってみた飛車のすぐ下に味方の桂馬がある。これが飛車の縦の効きを遮っているため、玉としては矢印にあるような逃亡ルートが確保できる。では、この桂馬がなければどうだろう。右図を見ていただければ分かるように、飛車の縦の効きが後方に広いので、先ほどの玉の逃げ道は成立しない。これが今回の"邪魔駒"である。左図、飛車を打たずに馬を引いて王手して、敵玉がこちら側の桂馬を取った後、馬が先ほど玉のいた場所へ移動して王手、玉はこれを取らざるを得ず、結果右図のようになるので飛車を打てばその後収束する(但し、右図は説明のため左図と桂馬の有無だけ違えてある。左図の詰め手順を辿ると、左上の馬は存在しなくなる)。玉側には、左側からの逃亡ルートが依然存在するが、金を捨てて飛車を成ればばっちり詰むのである。要は、最初の状態では玉の逃げ道が2通りあるのでそのままでは詰まず、邪魔駒を消した後は1通りになるので詰ましやすいということだ。
  しかしながら、考えてみると邪魔駒って普段からよく出てるんだよな……。こちら側の邪魔駒じゃなくて、相手の王様にとっての邪魔駒。結構味方の駒が邪魔して逃げられません、みたいなのは多い。多いというか大多数かもしれない。この図においても、敵方の桂馬と金及び全ての歩はいずれも玉の逃走ルートを限定するためかのような存在だ。かのような、じゃなくてそのものかもしれない。どれか1枚欠けても、玉の逃げ道が増えて詰まなくなってしまうのだ。強力な場所に陣取ってる敵の守備駒を、無力化した挙句玉の逃亡ルートを塞がせてしまう……というような詰め将棋も多い。味方の駒は取れない、これは相手にも言えることで、相手玉にしてみれば逃げ道を潰している場合だってあるわけだ。詰め将棋で盤面にある駒というのは、何かしら意味がある(ことが大多数である。意味のない駒を置いてある詰め将棋は駄作である)。その駒一枚一枚の意味を考えてみるのも面白い。事実、その意味を考えているうちに詰め手順が浮かぶこともある。前の土曜日の夕刊の詰め将棋だってそうだったしね。ってあんまり書くと、まだ懸賞の応募の締め切りが来てないからまずいけど。

(2006.11.28)

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