2025年2月半ば〜3月半ばに読んだ小説
『八咫烏』シリーズのせいでラッシュに入っていた小説感想文も、今回でひと段落となる。前回から時間が空いたのは、今日時点での最新刊『望月の烏』が文庫版より大きな四六判しかなく、分厚さもあって鞄に入れておきづらく、ちょっとした時間に読み進めて行くことが出来ずに読み終えるまでに時間を要したせいである。
【追憶の烏】
ナヅキヒコ、死んどったんかワレ!(ネットミーム)
というわけで、第一部ラストから第二部スタートの『楽園』の間にあった出来事が綴られる。『楽園』で奈月彦が出てこなかったことを訝しがっていたのだが、理由が単純明快だった。単純明快すぎた。お前、そこで死ぬのか……。話としては、雪哉が外遊へと出るところから始まる。そのまま外の世界で何を学び取るのか、という流れになるかと思っていたら金烏の“突然の死”――今週はミーム多めでお送りします。『主』の最後で雪哉は奈月彦に「死ぬなら俺の知らないところで死んでくれ」みたいなことを言ってたような記憶があるのだが、まさかまさかの伏線回収である。多分雪哉が山内にいたら暗殺は防げたような気がする。作者としては雪哉が邪魔だから外遊させた――と、メタ的な事情はこの辺りだろう。
奈月彦暗殺は東家と南家の謀略だったわけが、これはかなり思い切ったというか、雪哉の性格を見切った上での大きな賭けに出たという感じがする。一応表面上では、武力行使に至った場合「東南対北西」という四家を二分する戦いということにはなっていた。ところが東南側に勝つ見込みがまるでない。四家だけで見ても武力が突出しているのが北家。次に雪哉が宗家親衛隊の山内衆を率いている。金烏暗殺の仇討ちを掲げれば山内衆を動かすには十分すぎる理由だ。東南出身の山内衆もある程度はいるだろうけど、果たしてどの程度の抵抗勢力になれるか。そして明鏡院長束だ。本人は戦力にならないが、作中最強?の路近とその優秀な部下たちが手勢に加わる。万が一戦いになった場合に東家南家はどうするつもりだったのか興味深い。
結局実力行使には至らず、しかし最終章では『楽園』で書かれている通り雪哉が山内を掌握している。東南二家の思惑を雪哉は軽々と超えていったことになる。怖っ。しかし気になるのが、金烏亡きあと結界のほころびはどうしたのだろう? 奈月彦不在では直す手立てが全くないはず。山内は端からじわじわと狭くなっているのだろうか。
さて、『楽園』冒頭で出て来た“幽霊”の正体は浜木綿か姫宮といったあたりになりそうだが、それは最新刊『亡霊の烏』で明らかになるのだろうか。タイトル的にそうなるんじゃないかと思っているので、発売を楽しみにしている(追記。『望月』にて姫宮の線は消滅)。
【くま クマ 熊 ベアー】
今回の「八咫烏以外枠」はくまさんです。しかし書くことがない……いつもの「女の子を助けて感謝される」お話。強いて挙げるなら今回はレシピとか新しい家がないぐらいか。あ、そうそう。制服姿で過ごす時間が長かった今回のお話、もちろん戦う時はクマスーツ(着ぐるみ)にならなきゃいけないわけで、何と制服の上から着る。サイズは大丈夫なんですかね……。まあここで、噂に聞く魔法少女ものの変身バンクシーンとやらみたいなのが入ったらそれはそれで作品の方向性を疑わないといけなくなるわけで(笑) ちなみに今、初めて「バンクシーン」とは何かを調べてみたのだけれど、思ってたのと違う意味だった。話を戻して、次の巻あたりでユナが普通の服から瞬間でクマの着ぐるみに着替える技を模索し始めたりしたら笑うところである。
【烏の緑羽】
冒頭から笑わせてくれる。「長束は、路近のことがずっと怖い」――やっぱり怖かったんかーい! 北家の新年の集まりに「明鏡院長束である!」って登場した『主』の頃に比べ、ずっとずっと親しみやすいキャラになって来たなあしみじみ。いやしかし、私が何らかの形で創作する能力があったら、絶対『長束は、路近のことがずっと怖い』のタイトルで二次創作書(描)いてるだろうなあ。今からでもいいから絵の練習しようかな?(一生しないやつ)
というわけで、絵が描けるようになったら描いてみたいファンアート一覧がコチラ。
・銅鑼を叩く敦房
・『長束は、路近のことがずっと怖い』←NEW!!
一覧にするほど数ないやろ!!!
さて、長束メインの話になるかと思わせておいて、「緑羽」が主役――正しくは「羽緑」、翠寛のかつての名前である。翠寛が羽緑と名乗っていた頃の、件の路近と何があったかの話である。これで路近のことがよく分かるようになった……と言えればいいのだが、分かったような分からんような。ところでそういえばなのだが、『楽園』では路近も出てこなかったなあと。長束は失脚して出番がなかったと考えられるが、路近がそれで黙って大人しくしているような男には見えない。
さて、ラストで長束が「あの忌々しい博陸候」と表現する。普通に考えて「博陸候=雪斎(雪哉)」なのだが、今までこのシリーズには散々騙されているので疑いのまなざしを向けておく。雪哉でも雪斎でもなく「博陸候」と表現したのは、別の「博陸候」がいるのではないか。いくら雪哉とは言え、奈月彦逝去の後すぐに新体制の頂点に上り詰めたわけではないだろう。それまでの間にもう一人「博陸候」と呼ばれる人物がいてもおかしくない……と睨んでいる。どうしてそんなに雪哉に肩入れするのか? だって“第一部の主人公”だもん。あと、名前の「雪」被りも理由の一つ。あと、第二部が始まって悪者扱いされているのが気にかかる。作者が読者を騙そうとしているような気がしてならない。
【望月の烏】
巻ごとにキーパーソンが目まぐるしく変わる本シリーズ。今回は真赭の薄と澄尾の娘である澄生……と思わせてその実、紫苑の宮(奈月彦の娘)であることが最終盤で雪斎の口から明かされる。さらにその後、滝へと身投げした澄生だが、南家の姫、蛍が金烏代凪彦に「澄生は生きています」と告げる。ここ、結構重要なのでは、と感じた――以下いつもの当たらない予想だ。澄生はいかにして生き延びたか。描写によると、既に日が落ち八咫烏は転身して鳥形になれない時刻。一方で滝壺へは高さがあり、人の身で落ちて命が助かるとは思えない。となると、答えは一つしかないような気がする。“落ちる前に転身し鳥形になった”。今言った通り、普通の八咫烏には無理な芸当である。しかし真の金烏ならば夜でも転身できる。雪斎の言う通りに澄生が奈月彦の娘であるならば、澄生は宗家の血を引いている。金烏である可能性があるわけだ。先代金烏(奈月彦)のその子どもがまた金烏であることは、金烏の性質から言って無理がありそうな話ではあるが、奈月彦が金烏としてはイレギュラーな存在だった。正確に言うと「不完全な金烏」だった。山内存亡の危機にあって、二代連続となる金烏が生まれるのは説得力のない話ではない。
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というわけで、『八咫烏』シリーズの最新刊に追い付いた。明日は満を持して最新刊『亡霊の烏』を買いに行く。
『八咫烏』以外では、例によって『Re:ゼロ』の最新刊が発売されている。最近短編集は本編とひと月ズレて刊行されるようになってきており、来月発売予定になっている。他『クラなつ』の最新刊も4月予定。別にそう決めたわけではないのだが、小説感想文は4冊ずつのことが多いので次回のラインナップはこんな感じになるだろう。時期としては5月中を目指そう。
(2025.03.25)
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