2024年12月後半〜2025年1月前半 に読んだ小説
5冊と6冊目のほとんど読み終わってるけど、いつも通り4冊区切りで。
【玉依姫】
いよいよ大詰めが近い『八咫烏シリーズ』5冊目は、現時点で唯一タイトルに「烏」の文字が入らない。何と突然現代日本の話になる。それは「八咫烏」一族とは一体何なのか?という根本へ迫る。冒頭はちょっと面食らったが、読み進めるうちに『空棺の烏』までの流れを無視した話ではないことが分かって来る。奈月彦に金烏としての記憶が戻らない理由と推測される先代の身に何があったのか。山神とは。『黄金の烏』で出てきた綻びとは。
読んでいる途中で懐かしい感覚に襲われた。山神にかつての神らしさを取り戻させるために、奈月彦は大天狗の谷村潤と共に過去を探る。仮説を立てる段階で歴史的知識が並べられるが……ここちょっと『QED』っぽい。漫画ではなく小説の『QED』だ。その数学っぽいタイトルに惹かれて読み始めたら歴史推理ものだった、というジャンルを騙されたあのシリーズである(笑) 実際のところ切り口はかなり異なっているのだが、それでも歴史について語られる様子は『QED』主人公桑原崇の語り口を連想した。
残念ながらそのアプローチは実を結ぶことなく、山神は荒れ狂い信仰する人々を虐殺する。自ら英雄と称する何者かが荒神となった山神を倒し、新たなる山神の地位へ収まる。一件落着とも言えない結末になりそうだと思ったが、さらに『玉依姫』における主人公?である葛野志帆が訳の分からないことを言い始めた。物語は余韻と呼ぶには釈然としないものを抱えたまま幕を閉じる。ここ最近分かりやすい小説ばかり読んでいたせいか、ずいぶん読解力を要求されるなあというのが私の感じたところ。結局烏と猿はどうなった?
【弥栄の烏】
これにて『八咫烏シリーズ』第一部完となる。『玉依姫』のラストで薄々予想は付いていたが、『弥栄』は『玉依姫』の物語の最中、烏たちが山内でどうしていたのか、という話だった。なかなかに衝撃的だったのは、『玉依姫』で命を落とした奈月彦の側近が茂丸で、体の一部を失うことになったのが澄尾だったこと。ある程度想像は出来ていたことなのだが……。
シリーズ6冊を通してみて、一応雪哉が一番の主人公になるのかなあとは思う。『単』ではあせびの君と思わせて奈月彦? 『主』、『黄金』、『空棺』は明らかに雪哉、『玉依姫』は志帆となり、最後『弥栄』もやや難しいがやっぱりそのポジションは雪哉に戻ってくるのかなあ、と。その雪哉の『弥栄』での振る舞いは、主人公とは思えない冷徹なものが多い。目的のためなら手段を選ばないとでも言えばいいだろうか。いや、考えてみれば『空棺』も結構そうだったかな? 『空棺』より磨きがかかっている。猿の裏をかくために、貴人を囮に使う(曰く安全なところに避難しないほうが悪い)。相手が子ども(子猿)であっても容赦なし。すべては八咫烏の一族のために、ひいては愛する家族と故郷のために感情を廃し、妥協せず最も確実な戦術を取った。最後に自分の殻に閉じ籠ったかのような様子を見せたのは、罪悪感か何かの表れだったのか。訪れたとしてもまだまだ先のことになるが、漫画版で小説ラストのシーンが描かれたとき、私は涙を堪える自信がない。
やはり『玉依姫』同様、全ての謎が明らかになるわけではない。猿は「お前たちが勝手に新しい神を連れて来て、人間の姿を手に入れて、人間のような暮らしを有り難がった。俺たちは昔のまま生きたかったのに」と金烏奈月彦を非難する。そして最後は、奈月彦の懇願を嘲笑って自害する。悔悟する奈月彦に雪哉は「猿の言葉を信じてはなりません」と言い放つ。猿がそう言っているだけで何の証拠もない、と。結局その後も、猿の語った過去の出来事が正しいのかどうか不明瞭なままエンディングを迎える。残った真実は、新たなる山神は信仰する民を持たず、その一代限りで失われてしまう存在であること。山内もその時を以て終焉を迎える。漫画版『烏は主を選ばない』の冒頭には「これは山内が滅びゆくまでを綴った記録である」とあるが、この辺りを踏まえてのことだったのだろうか。
『八咫烏』シリーズ「第二部」がどういう話になるのか気になるところだが、一旦小休止。他の小説が刊行されたので順々に消化していくことにした。
【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 19】
まさかの「ザガン死す」エンド? まあ死んだとは書いてないし、フォルが心臓作り直したとか書いてるし、一応悪くても仮死状態なんだろう。魔王の刻印がバルバロスに移転しちゃったみたいだが、この辺まとめて20巻でなんとかするんだろう。作者が「またしても前後編です」みたいなことを言っていたような気もするのだが、「前中後」だねこりゃ。まあ作者自らネタバレするわけにもいかないだろうから、敢えて「前後編」と言ったのかも(18巻の段階で言ったかもしれないので、プロットが変わった可能性もある。元々バルバロスは出てくる予定なかったとか)
序盤は面白系で話が進み、途中からバトル展開に。何かよく分からないがとにかくみんな何かしら「凄い」らしい。スゴイスゴイばかりでちょっと食傷気味……まあライトノベルだしこんなものか。
【Re:ゼロから始める異世界生活 Ex6 剣鬼戦歌】
ヴィルヘルムの若き日の物語、完結編。3冊目とあって驚いたのだが、そういや2冊目もあったような……と思い出すのが怪しくなってくるぐらい刊行に間があった。
ラスト付近、テレシアの父親ベルトールの「幸せを求め出したらキリがない」的な言葉が沁みる。「幸せ」を「欲しいもの」に置き換えると身に覚えがありすぎて。欲しいものを手に入れて当分買い物しなくていいや、と思っていたら舌の根も乾かぬうちに次が欲しくなる。この連鎖、きっと永久に終わらないんだろうなあ。どこかで「足るを知」らなければいけないんだろうとは反省しているのだが。そういや先日友人と話をしていてゲームの話になったのだが、ゲームに関してはいくらか節度が持てるようになったかも……いや、興味を失っただけだね。
そのベルトールが遺した手紙(?)がいい仕事をして、感動的なラストに……と言いたいんだけど! その内容はこれから生まれてくるテレシアとヴィルヘルムの子どもの名前。それが“あの”ハインケルだと思うとちょっと複雑な気分になってしまうのだった。
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相変わらずペース配分がおかしなことになっている。『Re:ゼロEx』『イケナイ教』『烏百花 蛍の章』(『八咫烏』の外伝)の3冊を並行して読み進め、『Re:ゼロEx』が“勝った”……というかなるべく刊行順と思って今回の4冊目に滑り込ませた。その直後に『イケナイ教』4巻も終わり、『烏百花』も秒読みの状態。あともう少しだけ、小説読むのが遅い私にしては速いペースが続く見込みだ。
『八咫烏』はその次から第二部が始まる。現状文庫本そのものは手に入れているので表紙も目にしている。この作品、普通じゃないから「第一部」「第二部」の関係も普通じゃないような気がしている。“普通”「第二部」って「第一部」から少し後の話とかになるよね? 表紙イラストを見ると、「第二部」は「第一部」のパラレルワールドとかになりそうな気がしている。
2月に久しぶりの『くま』新刊が出る。次は『イケナイ教』、『八咫烏』2冊、『クマ』の4冊でお送りすることになるだろう。
(2025.01.18)
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